相続手続きで「相続人の中に行方不明者がいる場合」の遺産分割の進め方と不在者財産管理人の選任
目次
相続人の中に行方不明者がいると遺産分割はどうなる?
親が亡くなって相続手続きを進めようとしたところ、兄弟姉妹の中に何十年も音信不通の人がいる――。
このような状況に直面すると、遺産分割協議をどう進めればよいのか、途方に暮れてしまう方も少なくありません。
実は、相続人の中に行方不明者がいる場合でも、法律で定められた手続きを踏めば遺産分割を進めることができます。
ただし、その手続きには一定の時間と費用がかかるため、早めの対応が重要です。
この記事で解決できること
本記事では、相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割の進め方について、以下の内容を解説します。
- 行方不明者がいる場合に取るべき法的手続き
- 不在者財産管理人の選任申立の流れ
- 失踪宣告との違いと使い分け
- よくある失敗例と対策
- 専門家に依頼すべきケース
相続人が行方不明の場合、勝手に遺産分割はできない
相続が発生すると、遺産は相続人全員の共有財産になります。
そのため、遺産分割協議は相続人全員の同意が必要です。
⚠ 行方不明の相続人を除外して遺産分割協議を行っても、その協議は無効となります。
不動産の名義変更も預貯金の解約も、法的には認められません。
では、行方不明者がいる場合はどうすればよいのでしょうか。
法律では主に2つの方法が用意されています。
■ 方法①:不在者財産管理人の選任申立
行方不明者の財産を管理する「不在者財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらい、その管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加する方法です。
対象となるケース:
- 行方不明になってから数年程度
- 生死が不明だが生存している可能性がある
- 早期に遺産分割を進めたい
■ 方法②:失踪宣告の申立
行方不明者を法律上「死亡したものとみなす」手続きです。
失踪宣告が確定すれば、その人は相続人ではなくなるため、残りの相続人だけで遺産分割協議が可能になります。
対象となるケース:
- 行方不明になってから7年以上経過している(民法第30条)
- 災害などで生死不明の場合は1年以上(民法第30条2項)
- 生存の可能性が極めて低い
💡 多くのケースでは、迅速に手続きを進められる「不在者財産管理人の選任」が選ばれます。
不在者財産管理人の選任申立の流れ
不在者財産管理人の選任申立は、以下の流れで進めます。
【ステップ1】申立ての準備
申立人:
利害関係人(他の相続人など)または検察官
申立先:
行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
主な必要書類:
- 不在者財産管理人選任申立書
- 不在者の戸籍謄本・戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 不在の事実を証明する資料
- 不在者の財産に関する資料
戸籍収集の詳細については、別のページで詳しく解説しています。
【ステップ2】家庭裁判所による審理
家庭裁判所が、行方不明の事実と財産管理の必要性を審査します。
【ステップ3】財産管理人の選任
裁判所が適任と判断した人(多くは弁護士や司法書士)が財産管理人に選任されます。
この際、財産管理人が適正に業務を行うための予納金の納付を求められることがあります。
【ステップ4】権限外行為許可の申立
財産管理人が選任されても、それだけでは遺産分割協議に参加する権限がありません。
遺産分割は「権限外行為」に当たるため、別途権限外行為許可の申立が必要です。
この申立では、遺産分割の内容が行方不明者にとって不利益でないことを裁判所に説明する必要があります。
一般的には、法定相続分を確保する内容であれば許可されやすい傾向にあります。
【ステップ5】遺産分割協議の実施
権限外行為の許可を得たら、財産管理人を含めた相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議書を作成し、財産管理人が署名・押印します。
【ステップ6】相続登記・名義変更
遺産分割協議書に基づいて、不動産の相続登記や預貯金の名義変更を進めます。
なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産取得を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります(不動産登記法第76条の2、第164条)。
相続登記の義務化については、期限や罰則も含めて別ページで詳しく解説しています。
よくある失敗例と対策
❌ 失敗例①:行方不明者を無視して遺産分割してしまった
「どうせ見つからないから」と、行方不明者を除外して遺産分割協議書を作成し、相続登記を申請したケース。
法務局で書類が受理されず、やり直しになりました。
対策:
相続人全員の同意なしに行った遺産分割は無効です。必ず法的な手続きを踏んでください。
❌ 失敗例②:予納金の準備ができず申立てを断念
不在者財産管理人の選任申立をしたものの、裁判所から高額な予納金を求められ、支払えずに断念したケース。
対策:
予納金は行方不明者の財産額や管理の複雑さによって決まります。
❌ 失敗例③:遺産分割の内容が許可されなかった
行方不明者の法定相続分を極端に減らした遺産分割案を提出し、裁判所から権限外行為の許可が下りなかったケース。
対策:
裁判所は行方不明者の利益を守る立場にあります。
法定相続分を確保した内容でなければ許可されにくいため、遺産分割の注意点を理解したうえで協議内容を検討しましょう。
専門家に依頼すべきケース
不在者財産管理人の選任申立や失踪宣告の手続きは、法律の専門知識が必要です。
以下のようなケースでは、司法書士への相談をおすすめします。
- 行方不明者がいて遺産分割が進められない
- 裁判所への申立書類の作成に不安がある
- 予納金の金額や手続きの見通しを知りたい
- 相続登記の義務化に間に合わせたい
- 他の相続人との調整が難しい
みたか相続遺言相談プラザでは、相続手続きまるごとサポート(165,000円〜)をご用意しており、戸籍収集から遺産分割協議書の作成、不在者財産管理人選任の申立サポートまで、一貫してお任せいただけます。
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- 不在者財産管理人選任申立の豊富な実績
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行方不明者がいる相続は、時間がかかるうえに専門的な手続きが必要です。
お早めに無料相談をご利用ください。
💡 最新の法令や手続きの詳細については、司法書士にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 行方不明者が後から現れたらどうなりますか?
A. 不在者財産管理人を通じて行った遺産分割は有効です。
ただし、行方不明者が戻ってきた場合、その人の法定相続分が確保されているかどうかが重要になります。
Q2. 不在者財産管理人は誰でもなれますか?
A. 法律上は利害関係のない第三者であれば可能ですが、実務では弁護士や司法書士が選任されることがほとんどです。
Q3. 失踪宣告のほうが早く手続きできますか?
A. 失踪宣告は行方不明から7年以上経過していることが要件です。
さらに、官報公告などの手続きがあり、実際には半年〜1年程度かかることが多いです。
Q4. 行方不明者に借金があった場合はどうなりますか?
A. 遺産分割協議では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も含めて分割することが一般的です。
行方不明者の法定相続分に応じた債務も考慮する必要があるため、専門家への相談が不可欠です。
Q5. 相続人の中に認知症の人もいる場合はどうすればよいですか?
A. 認知症などで判断能力がない相続人がいる場合は、成年後見人の選任が必要です。
行方不明者と認知症の相続人が両方いる場合、それぞれに対応する手続きが必要になるため、早期に司法書士へご相談ください。
詳しくは相続人が認知症の場合の対応をご覧ください。
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この記事の執筆者
- イージス&パートナーズ司法書士法人 代表 安井大樹
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保有資格 司法書士、行政書士 専門分野 相続全般 経歴 平成14年(2002年)司法書士資格取得し、相続を専門として業界20年以上の豊富な経験と知識を持ち合わせる。
2017年6月 著書『ひとりでできる 実家の相続登記』を出版
2022年12月9日発売のPRESIDENT【2022.12.30号】に『2024年義務化 「相続登記」を自分で済ませるレッスン』が掲載
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