【おしどり贈与と相続】安易な利用は損?後悔しないためのメリット・デメリットと司法書士に相談すべきケース
ご夫婦で長年築き上げた大切なご自宅。
残された配偶者に安心して住み続けてもらうために、「おしどり贈与」という特例の利用を検討される方は少なくありません。
正式名称を「贈与税の配偶者控除の特例」というこの制度は、相続対策としても有効な手段ですが、メリットだけを見て安易に利用すると、かえって損をしてしまう”落とし穴”が存在します。
本コラムでは、「おしどり贈与」の基本、相続対策としてのメリット、そして後悔しないために必ず知っておくべきデメリットを専門家である司法書士がわかりやすく解説します。
目次
「おしどり贈与」とは? 相続対策で注目される理由
「おしどり贈与」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産(自宅)またはその取得資金を贈与した場合に適用される特例です。
通常の贈与税の基礎控除額110万円とは別に、最高2,000万円までが非課税になります(合計2,110万円)。
この制度が相続対策として特に注目される最大の理由は、以下の2点です。
メリット①:死期が迫っていても相続財産から除外される
通常の生前贈与は、相続開始前7年以内に行われた場合、贈与財産を相続財産に加算し直して相続税を計算する「生前贈与加算(持ち戻し)」の対象となります。
しかし、おしどり贈与によって贈与された財産は、この「生前贈与加算」の対象外とされています。
このため、ご高齢になり、いつ相続が発生してもおかしくない状況であっても、自宅を生前贈与することで、将来かかるであろう相続税の課税対象額を確実に減らすことができるのです。
メリット②:遺産分割の心配をせずに住居を確保できる
配偶者が生前に自宅の所有権を得るため、その自宅は相続財産から外れます。
これにより、遺産分割協議の対象にならず、他の相続人(お子様など)との話し合いで、住む場所を失う心配がなくなります。
また、2019年(令和元年)の民法改正により、おしどり贈与で贈与された居住用財産は、原則として「特別受益」として相続財産に持ち戻す必要もなくなりました。
これにより、遺された配偶者の生活の安定が強く図られています。
知らないと損をする「おしどり贈与」の大きな落とし穴
多くのメリットがある一方で、「おしどり贈与」を検討する際に最も注意すべきは、「費用倒れ」のリスクです。
安易に「節税になる」と考えてしまうと、逆に大きな出費を招くことになりかねません。
落とし穴①:相続税の「配偶者の税額軽減」という非課税枠
相続時に配偶者が財産を相続する場合、「配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)」という大きな特例が適用されます。
この特例により、配偶者が相続する財産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のどちらか多い金額までは、相続税が非課税になります。
相続財産が1億6,000万円以下である場合、そもそも相続税はかかりません。
このようなケースで「おしどり贈与」を利用しても、節税効果はゼロです。
落とし穴②:不動産の名義変更コスト(税金)が非常に高い
おしどり贈与で自宅を贈与する場合、贈与税は非課税になっても、不動産の名義変更(登記)にかかる費用は発生します。
そして、この費用が相続時と比較して非常に高額になります。
税金の種類 | 贈与(おしどり贈与)時の税率 | 相続時の税率 |
登録免許税 | 固定資産評価額の 2.0% | 固定資産評価額の 0.4% |
不動産取得税 | 原則として課税される | 非課税 |
ご覧の通り、贈与の場合は登録免許税の税率が相続の5倍であり、さらに相続時にはかからない不動産取得税も発生します。
相続税の節税額が、この贈与時にかかる高額な不動産移転コスト(税金・司法書士報酬)を下回ってしまうと、結果的に「費用倒れ」となり、損をすることになります。
落とし穴③:二次相続まで見据えた対策が必要
ご主人から奥様に贈与をした後、奥様が先に亡くなり、ご主人がその自宅を再度相続する、という事態になると、贈与時のコストが完全に無駄になります。
また、奥様が自宅を贈与され、その奥様が亡くなった「二次相続」の際、お子様が相続する財産総額が増えることで、お子様にかかる相続税の負担が増加する可能性もあります。
おしどり贈与は慎重に!
「おしどり贈与」は、遺された配偶者の住居を確実に確保し、相続直前の贈与でも課税されないという大きな魅力を持っています。
しかし、日本国内で相続税がかかるのは一部のケースに限定される上、ほとんどのご家庭では「配偶者の税額軽減(1億6,000万円控除)」で相続税が非課税になります。
安易な節税対策としておしどり贈与を利用する前に、必ず以下の試算を行いましょう。
1.相続時のシミュレーション: 相続税の配偶者控除を使った場合、相続税が発生するかどうか。
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2.贈与時のコスト試算: 不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬の合計額。
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3.二次相続の試算: 配偶者様が亡くなった際、お子様にかかる相続税額。
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この記事の執筆者

- イージス&パートナーズ司法書士法人 代表 安井大樹
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保有資格 司法書士、行政書士 専門分野 相続全般 経歴 平成14年(2002年)司法書士資格取得し、相続を専門として業界20年以上の豊富な経験と知識を持ち合わせる。
2017年6月 著書『ひとりでできる 実家の相続登記』を出版
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